新人類の少女

面接
 永田は家に帰ってきた。
 彼はこんな楽しい思いをしたのは始めてだった、恋人みたいな感じ。
 しかし、エビーはまだ子供だし、第一エビーは人間じゃない。
「明日の面接は何時から」
 母親が聞く、明日は就職の面接があるのだ。
「10時から」
「リラックスしてね、あせらなくてもいいのよ」
 面接でいつも落とされるのだ。
 永田は、エビーと自分を比較してみる、わずか16歳で命がけの実験をやろうとしている、自信たっぷりで、話も上手。
 自分とは比較にならない。
「もう寝たら」
 と母親
「そうだね」
 永田は母親をみた
「心配かけるね」
「なにいってんのよ・・・、明日はうまくいくといいね」
 永田は布団に入った、電気を消して目をつむる。
 と、頭の中で声が
「おやすみなさい」
「えっ、あ、あの、おやすみ」
 永田はあわてて返事をした。


 次の日、永田は面接を受けていた。
 ありきたりの質問をされ、それに答えていた。
 すると、突然テレパシーが入ってきた。
「永田さん、今、会える?」
 エビーだ。
「えっ、今、面接中」
「近くまで来ているんだけど?」
「今、忙しいからあとで」
 心の中の会話だ。
 面接担当者が変な顔をしている。
「どうかしました?」
「いえ、なんでもありません」
「では、次の質問ですが、やりたいことが何かありますか?」
 面接でよく聞かれる質問だ。
 いままでだったら、ありきたりの返事しかしなかったが、が、ふとエビーのことが頭に浮かんだ。
「人間以外に別の人類がいると思うんです」
 面接担当者がキョトンとしている。
「その別の人類の手助けをしたいと思っています」
「ほう」
 こんな事を口走ったら面接はだめになるが、永田は言わずにいられなかった。
「彼らは少数ですが、この地球に住んでいます、手助けが必要なんです」
「君は変わっているね、その、別の人類がなぜ存在すると思うの?」
「会ったんです、今もその人からテレパシーで連絡がありました」
 面接担当者はあきれたように手を広げた。
「本気でそう思っているの」
「はい」
「君、もういいよ、ご苦労さん」
「信じられない話ですが、本当なんです」
 永田は妙な自信が沸いてきた、今まで他人に自分を合わせようとしすぎたんだ、もっと自分に自信をもたなくちゃ
「本当にいるんです」
「君がその別人類をここへ連れてきたら信じるよ」
 面接担当者はいかにもバカにしたように言った。
 面接はこれで終わりとなった。帰ろうとして、ふと見ると、なんと、窓の外にエビーがいる、ここは確かビルの5階のはずだが。
「エビー、そこで何しているの」
 永田は窓に駆け寄った。
「ごめん迷惑だった?」
 窓を開けて下を見る、エビーは宙に浮いているのだ。
「君、空が飛べるの?」
「うん」
 とエビー
 エビーは宙に浮いたまま面接室の中に入ってきた、そしてトンと降り立った。
 永田は面接担当者に振り返った。
「あ、あの、彼女が今話した別人類なんです、空が飛べるんです」
 面接担当者はぽかんとしている。
 永田はどうしたものかとしばらく黙っていたが、面接担当者は放心状態だ。
「帰ろう」
 永田はエビーに言った。もちろん永田は普通にエレベータで帰るつもりだった、しかし、エビーは階段やエレベータを知らない。
「了解」
 突然、がくんと肩を持ち上げられた、足が床から離れる、永田は宙に浮いてしまった。
「わー、何するんだ」
「帰るんでしょう?」
 エビーは窓から帰る以外に方法はないと思ったのだ。
 エビーも宙に浮いていて、一緒にすーと窓の外に出る、足元はるか下に歩道が見える。
「なんで窓からでるんだよ」
「でも、帰ろうって言ったじゃない」
「だから、普通にエレベータで降りるんだよ」
「エレバータって?」
 面接担当者がこちらを見ている。
「あの、では、失礼します」
 永田は窓の外から宙に浮かんだまま挨拶した。




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