新人類の少女


それから10日ほどたった
エビーからは時々連絡が入る程度になった、エビーの連絡ではさらに何人か付き合いの幅を広げたようだ。
エビーたちの部族は遠く離れていてもテレパシーで連絡を取り合っているという。エビーもそのやり方で次々と紹介してもらって
人間の中に情報交換ができる相手を作っているのだ。
今では永田の価値はずいぶんと低くなったみたいだった。
永田も一時の夢から覚めていて、冷静にエビーの事を考えられるようになっていた。
エビーは、あれだけ動き回って、騒ぎも起こしているが、ここは地方都市なのでマスコミ沙汰にはならなかった。
マスコミは東京の事以外は関心がないのだ

「永田さん助けて」
久しぶりにエビーからテレパシーが来た
「どうしたの?」
「人間の薬を飲んでみたの、そしたら気分が悪い、吐いて、動けない」
「どこにいるの?」
「最初に永田さん会った近く、そこに、穴を掘って中にいるの」
「すぐ行く」
永田は車で駆けつけた、車で行けないところは降りて走る。
「近くに来たよ、どこ?」
「今、向いている方向の左」
エビーには永田の状態がわかっているのだ
「向きを指示して」
永田は指示どおりに走る、すごいヤブの中を登って傷だらけになって進んだ。
目の前に崖がそそり立っているとこへ来た、そこ、と言われる所を見ると崖の面に岩がある。
「その岩をどけて、そこに入り口があるの」
永田は渾身の力で岩を押す、超能力ならこんな岩簡単に動くんだろうが人手では大変だ。
それでも岩を動かし、その隙間から中に入る。
中は広い、エビーが横になっていた
「来たよ」
「ありがとう」
「どうしたの?」
「これを手に入れたの」
エビーは市販の風邪薬の空の瓶をみせた
「全部のんじゃった」
「バカな」
「戸部先生からもそう言われた、たった3粒でいいなんて思わなかったの」
エビーはテレパシーで戸部先生にも連絡をとっていたのだ。
「人間の薬を飲めるのか実験したかったの」
「救急車を呼ぼう」
永田が言ったが、エビーは首を振る
「意識を失うかもしれないから、人間の所は無理」
そうか、エビーは息を止めているのだ、眠る時は無菌状態の場所が必要なのだ
「戸部先生に電話して治療の仕方を聞いて」
エビーは苦しそうに言う
永田は戸部先生に携帯で電話する
「エビーは病院にはいけないので、君がそこで処置をするしかない、いいね」
「はい」
「まず、エビーの意識に注意して、エビーの意識がおかしくなったら君はすぐにそこを出てエビーに中を殺菌させるんだ、いいね」
永田は戸部先生の指示どおりにエビーの手当てをした
何時間もがんばった。
「もう大丈夫だろう、もう、眠ってもいい、殺菌を忘れないように」
「わかりました」
永田はエビーを見た
「エビー、眠りなさい、僕は外へ出るから、中を絶対に殺菌するんだよ」
「わかってる、ありがとう」
永田は外へ出た、外はもう真っ暗だった。
岩をしっかりと閉めた
「エビー、入り口は閉めたから殺菌して」
「わかった」
真っ暗なので、帰るのは無理だった。
永田は岩の前に座った。
夢中だった、エビーを絶対に助けたかった。
やっぱりエビーはかけがえがないのだ。

次の日エビーがやってきた
「ありがとう」
「もう大丈夫なの?」
「もう元気よ」
「なぜ、薬の説明書を読まなかったの」
「文字はテレパシーじゃ読めないの」
エビーは目を伏せた
「私のことばかりしてもらって、私は何もしてあげていない、申し訳ないと思ってます」
「気にしなくていいよ、君は大事な仕事をしている」
永田はエビーが自分の事を負担に感じないようにしたかった。
「そうだ、あの会社から採用通知が届いたよ」
「わー、よかったじゃない」
「ちょっと考えるよ、やめとこうと思っている」
しばらく話してからエビーは帰っていった。
それからは毎晩必ず「おやすみ」のテレパシーがくるようになった。





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