新人類の少女

風邪の感染者
始めて永田がエビーにあってから1ヶ月がたった、いよいよエビーの実験も終わろうとしていたころ、突然エビーからテレパシーがきた。
「永田さん」
エビーの声は緊張している
「どうしたの?」
「風邪の感染者が出た」
エビーのショックがテレパシーで伝わってくる
「私たちの部族に風邪に感染した人が出たの、みんな死んでしまう」
永田は以前エビーが話したことを思い出した。
部族内に風邪の感染者がでたら、もう、どうしようもないのだ。発病時点ですでに部族全員に感染は広がっていて、
10日くらいで全員が死んでしまうのだ。
部族全滅は数年前にも近くの部族で起きたことがあるそうだ。
「今、戸部先生の所へ向かっているところ」
エビーはもう行動している、めそめそするような娘じゃない。
「わかった、僕も行く」

電車に乗って大学病院へ向かった、最近はエビーに連れていってもらうのに慣れているので、電車はかったるい。
電車に乗っているとエビーから連絡が入った
「これから、感染者の鼻水を取りにいくところ、ウイルスの種類を特定するのに必要なんだって」
「わかった」
「永田さん今どこ?」
「電車でそっちへ向かっているところ」
「電車で?」
エビーはちょっと困ったようだった
「ごめんね、迎えに行けない、自分で来て」
「もちろんだよ、そっちを優先して」
大学病院に着くと、戸部先生の研究室に駆け込んだ。
戸部先生はいない、仕方ないから研究室で待っていた。
することがないまま時間が過ぎて行く、何か手伝える事がないかと考えるが手伝えることがあるわけない。
しばらくすると、エビーから連絡が入った
「鼻水は採取したわ、そっちへもどるから」
「戸部先生はどこか知らない?」
「さっきは薬を確保するために薬剤部にいたよ」
「何か手伝えることない?」
「私はない、戸部先生に聞いてみて」
テレパシーは切れた。
エビーはぴりぴりしている、一刻を争う仕事をしているのだ。
永田は自分が惨めになってきた
「俺って、バカだな」
「何にも出来ないくせに、こんな所に出てきて」
さらに時間がたった
エビーから連絡が入る
エビーは永田に細かく状況を教えてくれる、気をつかっているのだ。
「戸部先生の指示で鼻水を分析センターへ持って行くから、
戸部先生は今は患者さんを診察中、今日できることは終わたって」
永田はだまっていた、自分の無力さが情けなかった。
「永田さん、いる?」
「あのさ、手伝うことがないみたいだから、俺、帰るから」
「わかった、ありがとう」
テレパシーはプツンと切れた。
しばらくその場に突っ立ていた、情けなかった。
研究室を出ると、とぼとぼと電車で帰った。

その後もエビーは細かく連絡をくれる
「今、家族の所、今日はここにいるつもり」
「久しぶりだね」
「友達も来てるよ」
「そう、よかったね、あの、連絡大変だから、こんなに細かくしなくていいよ」
永田がエビーが気をつかってくれるのが返って心苦しかった。
少し間があった。
「永田さん」
エビーは精一杯の気持ちを込めて言う
「今日は本当にありがとう」
「俺、何もしてないよ」
永田は情けなさがこみ上げてきた
「俺って、俺って、だめだな、何にもしなくてさ、ただ待っているだけだった、役にたてなくてごめん」
「うれしかったよ」
永田はこれ以上話したら泣き出しそうだった
「せっかくの家族の所なんだから、テレパシー、もう切ろう」
「わかった」
エビーの家族の事を考えた、どんな家族なんだろう。
でも、もうすぐみんな死んでしまうかもしれないのだ。
エビーの気持ちを考えるとたまらない。




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